3-Day Designing Camp Day 2 レポート
令和7年10月24日から26日の3日間、『3-Day Designing Camp』(主催:大崎町SDGs推進協議会)が開催されました。リサイクル率日本一16回を誇る、「未来の社会に一番近いまち」鹿児島県・大崎町を舞台に、循環型社会の未来を地域とともに実践的にデザインするプログラム「CIRCULAR VILLAGE DESIGNING」が令和7年度より始動し、その取り組みの一環となります。今回はその様子をレポートをお届けしています。
Day1のレポート記事はこちら。

<目次>
チェックイン
まずはチェックインから。Day1の感想をペアで共有する時間になりました。



まちあるき
Day2の午前中はまちあるきの時間。
まちの皆さんの協力のもと、最初の1時間は全員で同じルートを、その後は「きおくの循環」「つながりの循環」「ものの循環」チームがそれぞれのルートでまちあるきをしていきました。






「きおくの循環」チーム ルート
ごみステーション→郷土資料展示室→川畑食堂→まきのせ電器→マツザカヤ→琥珀


「つながりの循環」チーム ルート
ごみステーション→郷土資料展示室→後藤書店/洋品店→おしゃれの店 浜崎→菓子処さつまや→かごしま屋→美食-DO


「ものの循環」チーム ルート
ごみステーション→郷土資料展示室→後藤金物店→岡田理容室→陶千花→大崎書店→智庵


ワークショップ-導入-
ここからはフィールドワークやまちあるきを通して得た学びや気づきなどをもとに、それぞれのチームのテーマに沿ったアイデアを考えていくワークショップの時間になりました。この時間帯からは住民の方も参加者として数名加わり、一緒にアイデアを深めていく時間に。まず、今回の『3-Day Desiginig Camp』に対する想いについて、改めて事務局から共有がありました。
「3日間で得た経験を単に持ち帰るのではなく、その学びを地域に残し、住民と共有することで、未来に向けて一歩進むことを目指していきましょう。」


今回のプログラム全体のテーマと各チームのテーマは以下のとおりです。
【全体のテーマ:どうすれば循環型社会の未来をデザインできるだろうか】
●「ものの循環」チーム
テーマ:どうすれば環境のためだけではないリサイクルに楽しさ・喜びを生み出すことができるだろうか?
●「きおくの循環」チーム
テーマ:どうすれば日常の中の愛着や知恵をつなぐことができるだろうか?
●「つながりの循環」チーム
テーマ:どうすればみんなに愛される場所を作ることができるだろうか?

上記のテーマをデザインの力で解決するために、3つのデザインのポイントを挙げられました。
- 「あなたのために」を大切にし、全体を一度に解決しようとせず目の前の一人が喜ぶことを考えること
- 「つくりながら考える」姿勢で、絵や模型などをつくって思考を動かすこと
- 「実験志向」で小さく失敗して学びながら徐々に前進することで、地域での循環や幸せづくりを段階的に改善していくこと

そして、今後のアイデアをカタチにしていく上での4つのSTEPについて説明がありました。
<アイデアをカタチにする4つのSTEP>
STEP1(Day2)
TANEカードのシェアと掛け算STEP2(Day2 ホップ)
未来につながる「問い」をつくるSTEP3(Day2 ステップ)
アイデアの山を積み上げるSTEP4(Day3 ジャンプ)
つくる

ワークショップ-STEP1 TANEカードのシェアと掛け算-
ワークショップがスタートし、STEP1(TANEカードのシェアと掛け算)から。まずは、TANEカードをもとに参加者同士で互いの気づきや共通点を共有し、住民から意見をもらうなどして情報を広げていく作業からスタートしました。




ワークショップ-STEP2 未来につながる「問い」をつくる-
STEP1を経て次の段階として、いきなりアイデアを出すのではなく、多くのアイデアを引き出しやすい「問い」を一つつくる作業(STEP2 未来につながる「問い」をつくる)へ。デザイン思考の手法に沿って(STEP2)→(STEP3 アイデアの山を積み上げる)→(STEP4 つくる)という流れで進めていくと事務局より説明がありました。








STEP2の時間が終了し、各グループが導き出した「問い」の発表へ。
まずは「きおくの循環」チーム。
個人案をチームで磨き上げて「大崎町を誇りに思う人が自分の経験や体験を残し、それまで当たり前だった記憶を、まち全体の共有された宝物に変えるにはどうすればよいか?」を問いに定めたといいます。まちあるきで住民へのヒアリングを通じて「あの建物は、昔はんこ屋さんだった」などのエピソードが明らかになり、知っている人には当たり前の記憶だったり地域に根ざした日常の記憶を、誰にとっても大切な共有財産にするためのアイデアを考えることにしたのだとか。

続いて「つながりの循環」チーム。
主人公をフレッシュな視点を持つ人や新しいことに挑戦をする人に焦点を当てることが重要だと考え、問いをつくったといいます。まちあるきを通して、住民の中にある想いや昔話がたくさん存在することに気づき、それを掘り起こすことで新たな発見や地域の結びつきが生まれると考えたそうです。さらに、「湧き水」や「結び目」を生み出すために、特定の場所を活用し、住民の想いを引き出して新しいつながりをつくるアイデアをカタチにしていくと話がありました。

最後は「ものの循環」チーム。
住民が分別を当たり前に行うためには、分別された資源がきちんと循環されているという実感を持たせる仕組みが必要だと考えたといいます。具体的には、住民が分別の重要性を感じられるような新しいアイデア(例: 「おかえり環ちゃん」のようなもの)を生み出し、人と人がつながりながら循環するアイデアをカタチにしたいと話がありました。

ワークショップ-STEP3 アイデアの山を積み上げる-
Day2の最後はSTEP3「アイデアの山を積み上げる」作業の時間。
事務局より次のように説明がありました。
「アイデアを創出するには、初めから完璧を求めず、まずは量を出してから選別する“山を積み上げる”アプローチが有効です。中心の問いに集中し、余計なことは脇に置いてアイデアを出してみてください。個人作業とグループ作業を組み合わせることで、より良いアイディアが生まれてくると思います。」
具体的なワークとして、個人で中心の問いに基づいたアイデアをポストイットに書き出していく作業からスタートしました。






グループワークが終わり、各チームのアイデアの発表へ。
まずは「きおくの循環」チームから。
大崎町を誇りに思う人々の経験や体験を記録して共有の記憶にする方法を模索し、身体・もの・まち並み・文化などの記憶に分類した結果、最終的に「ものの記憶」に焦点を当てたといいます。そして、「後藤用品店」の服を使って現在の住民が着る写真を撮り、昔の地元の若者の写真と組み合わせて昔と今を混ぜた写真集をつくるアイデアに至ったのだとか。
「フィールドワークで後藤洋品店のデッドストック衣料や昭和のレトロ家電などの“お宝”を発見し、継承したいが継ぐ人がいない現状や放置すれば捨てられてしまう一方で好む人もいるという課題も感じました。楽しく継いでくれるにはどうしたらいいか検討した結果、現実的に取り組める手段として写真集をつくることにしました。」

次は「つながりの循環」チーム。
大崎で「サーキュラー(循環)」を意識した地域コミュニティをつくりたいという考えを軸に、既存のごみステーションを「サーキュラーステーション」とし、朝にコーヒーを提供するカフェのような場にすることで、住民同士の交流を促進するアイデアを提案しました。
「さらに、五感を使った演出や体験型の仕組みを取り入れ、楽しみながらゴミを捨てたり、地域情報を集められたらと思っています。このアイデアにより、地域の魅力を発信し、住民参加型の循環型コミュニティを育成できたらと考えています。」

最後は「ものの循環」チーム。
「おかえり●●ちゃん」という横断的なブランドをつくり、ものをリサイクルしておわりではなく、そこからリサイクル・アップサイクルされたものがどのように暮らしに「還って」きたか、を住民が知ることのできる状態を作りたい。さらに、SNS発信やストーリーマーケティングを通じて、ごみの分別活動と住民の距離を縮めることを目指すといいます。
「“おかえり”の概念を通じて、リサイクルを喜びに変えることが大事だと思います。地域イベントへと発展させたり、さらに、ごみ由来のプロダクトにインタラクティブ(※)機能を加えることで、楽しさや発見を提供する機会もつくれたらというアイデアも出ました。」
(※)情報の受け手と送り手がやりとりできる状態のこと。

STEP1~3を踏まえて、事務局から次の2点をポイントとして伝えられました。
今回のプログラムでは
- 大崎町で出会った人からの学びや具体的な試みを通して、新たなアイデアを生むことを実際に体感する
- 完璧な解答を求めるのではなく、まずは実験として一歩を踏み出すこと。
上記のポイントを踏まえて、Day3のSTEP4「つくる」に臨んでほしいと言葉がありました。

次の記事ではDay3(STEP4「つくる」、実施発表会)の様子をお届けします。
取材・執筆・撮影:上 泰寿(ケアの編集者)
クレジット
プロフェッショナルパートナー
- 合同会社メッシュワーク 水上 優様
- BAGN代表取締役 坂口 修一郎様
協力
- 大崎町
プログラムディレクター
- 株式会社KESIKI
アーカイブ
- 取材・執筆・撮影:上 泰寿様(ケアの編集者)