大崎リサイクルシステムの展開に向けて、静岡県西伊豆町に現地調査へ

展開 西伊豆町 視察 静岡県

大崎町SDGs推進協議会では、リサイクル率81.6%を誇る大崎リサイクルシステムを他の自治体でも実践することを通じて、大崎町だけでなく社会全体で環境負荷を減らすことを目指すプロジェクトを展開しています。

本プロジェクトでは、私たちが現地に赴いて調査をしたり、大崎町への視察受け入れを通じて、自治体での実践の可能性を探り、導入のサポートを進めています。

今回はリアス式海岸の複雑な地形を持ち、古くからカツオ漁など漁業の町として栄えた静岡県西伊豆町に伺い、水産加工業から出る加工残渣の堆肥化の可能性について調査を行いました。

西伊豆町とのこれまで

西伊豆町と協議会との関係は、昨年の6月まで遡ります。

周辺自治体との焼却施設広域化に合わせて、持続可能な廃棄物処理の仕組みを考えるために、西伊豆町の星野町長はじめ、関係者の皆様が大崎町を訪問されました。

その後、実際に分別の担い手となる方々に現地を見てもらいたいという星野町長の意向により、西伊豆町消費生活研究会と町女性会に所属する、総勢約20名の皆さんが大崎町にいらっしゃいました。

静岡県西伊豆町
西伊豆町消費生活研究会と町女性会の皆さんが生ごみ堆肥化を行っている大崎有機工場を視察。

西伊豆町消費生活研究会と町女性会の皆さんが生ごみ堆肥化を行っている大崎有機工場を視察。

視察時には大崎町衛生自治会の方々とも意見交換を行い、その様子が南日本新聞で紹介された

西伊豆町の訪問箇所と感じたこと

大崎リサイクルシステムの実践がどの程度可能なのかを明らかにするために、今回は協議会が西伊豆町にお伺いしました。

西伊豆町は、大崎町と同じ約100平方キロメートルの面積を持ち、東側は1,000m級の急峻な山に覆われ、西側に居住エリアが集中する地域です。

今回の訪問を通じて

  • 生ごみ堆肥化の実験を行う場合、活用できそうな場所や設備があるかどうか
  • 廃棄物処理を行う場所と居住エリアとの距離感
  • 住民の方々や事業者の方々の温度感

などを把握するために、以下の場所を訪問しました。

静岡県西伊豆町

まずは、生ごみ堆肥化の実験を行えそうな箇所の確認をしました。

候補地を視察する際は、

  • スペースが十分に確保できるか
  • 重機の入退場が容易か
  • 使える機材や資材があるか
  • 生ごみが排出される居住エリアからの立地はどうか(遠いと収集運搬にかかるCO2排出量やコストが大きくなってしまうため)

などを確認していきます。

特に、2箇所目に訪れた場所には、すでに町内で発生した木くずが運び込まれており、この木くずを生ごみの分解に使える可能性を感じました。

静岡県西伊豆町
1箇所目の雨を避けられる場所を確認。ここまでの道のりには懸念点も見つかった
静岡県西伊豆町
2箇所目ではすぐにでも使えそうな木くずを確認。雨風を避けられる簡易の建物をどう準備するかが課題
木くず

候補地を確認した後は、大崎町を視察された消費生活研究会の方々にもヒアリングを行いました。同研究会は大崎町訪問後、西伊豆町のリサイクル改善に向けた勉強会を繰り返し行ったり、実際に生ごみを堆肥化できそうな用地などを皆さんで見学したり、家庭で堆肥化を始めた方もいるそうです。

堆肥化事業において、必要不可欠なのが、住民の方の協力です。西伊豆の住民の方々が非常に熱心で、新しいことに挑戦する意欲が高く、堆肥化の実証実験へのご協力やその後の広がりに大きな可能性を感じました。

また今回の堆肥化の対象となる水産加工現場で出る残渣に関するヒアリングのため、創業110年以上の老舗である入久水産様を訪問しました。

入久水産様は、産業廃棄物の収集運搬許可を有しており、周辺事業者の魚のアラも回収しています。集めたアラは、腐らないように1週間大きな業務用冷蔵庫で保管を行い、週に1回、西伊豆町から往復約125km離れた、沼津の処理施設へ社長自ら運んでいるとのことでした。

実際にお話を伺うと、ロシアのウクライナ侵攻による原油高の影響を受けており、冷蔵保管にかかる電気代や毎週の収集運搬に大きなコストと労力がかかっていることが分かりました。

魚のアラを1週間保管する業務用冷蔵庫。電気代高騰の煽りを受けている
魚のアラを1週間保管する業務用冷蔵庫。電気代高騰の煽りを受けている
魚のあら
魚は鯵や秋刀魚に金目など。しっかりと冷蔵保管されているので、魚の臭いはきつくない
西伊豆町
周辺事業者の分も合わせて、毎週6トンの魚のアラを沼津市の処理施設に運んでいる

今後に向けて

今後は、処理負担の大きい水産加工残渣の堆肥化から検討する予定です。その際に、家庭の生ごみも合わせて回収することで、住民の方々にもはじめから堆肥化の取り組みにご参加いただけるようにしたいと考えています。

実証実験の方法の検討や、水産残渣を町内で処理することでどのぐらいCO2排出量や事業者のコストが抑えられるのかを試算しながら、西伊豆町にとって効果の高い方法を検討していきたいと思います。

夕陽
「夕陽日本一宣言の町 西伊豆町」。リアス式海岸に打ち付ける冬の海風は寒く厳しかったが、夕陽の美しさに癒された

(文・ディレクター 藤田香澄)

プレスリリース

なし

クレジット

視察・調査にご協力いただいた方々

  • 西伊豆町役場 副町長 高木 光一様
  • 西伊豆町役場 産業建設課 課長 久保田 寿之様
  • 西伊豆町役場 産業建設課 農林水産係 係長 椿 一美様
  • 西伊豆町役場 産業建設課 農林水産係 松浦 城太郎様
  • まちづくり課 商工係 主幹兼係長 山本 友也様
  • ヤフー株式会社 長谷川 琢也様
  • さかなデザイン 安達 日向子様 
  • 株式会社トビムシ 飯泉 浩二様
  • 西伊豆プロジェクト 矢岸 洋二様
  • 西伊豆町 消費生活研究会 長谷川 琴美様、佐野 ひで子様
  • 入久水産株式会社 代表取締役社長 鈴木 清吾様
  • 株式会社浜田 寺井 正幸様
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